2014/06/20


最近さぁ・・・・・・、俺。
おバアちゃんにナンパされたんだよね・・・・・・・。

日本橋浜町って街によく行くんだ。
REFUSEが在る森下って街で最悪なのは、
本屋が無い事と心地の良いカフェが少ない事。
そこで、森下から橋を一本超えると、日本橋浜町って場所でね。
明治座って舞台とか芝居とかやってる所とか、
水天宮とかそこいら辺があんだけど、
所謂な、お年寄り観光が花盛りな土地なんですよ。
古い建物とか風情の有る店とか多いから、
俺も結構好きな土地ではあるんだけど、
その日も気分的に森下よりも浜町のカフェかなって、俺。
軽く移動して、カフェの前にバイク停めてると、
後から俺に向って呼ぶ声がする。

「おニイさん。おニイさん。ちょっといいかしら?」

振り返ると、白髪混じりで細身の女性。
歳の頃なら70になろうかってぐらいの・・・・・・・・・。
傍らには、これまた同じ歳くらいの樽みたいな女性。

「へい。何でがしょ?」
たまにあるんだが、バイクの停める場所とかで、
自分の土地でもねぇのに文句を言うお年寄りがいたりするので、
若干、メンドクセェなって思いながらも応える、俺。

おバア「おニィさぁ〜ん。まぁ〜、いい男ねぇ〜」

・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・あんまり嬉しく無い。
既に老眼も進んでるであろう歳の頃の方に言われてもね。
きっと、メキシコ人とルー大柴の見分けもつかなそうだし、
タイガーマスクとタイガー服部の違いが判らなそうだ。

「あーそーっすか。ありがとーございます」
さっさとカフェで憩いの考え事時間を過ごしたい、俺。
テキトーに対応して、ご退場願いたかったんだが、
腕を触りながらおバアちゃんは話し続ける。

おバア1「何これっ?刺青なのぉ〜?」

おバア2「違うはよぉ〜タエさん。今はタツーってのよぉ〜」

おバア1「あ〜っ、そうそう。タツーよねぇ」

おバア2「そうよぉ〜刺青なんて言わないのよぉ〜」

 

・・・・・・・・・・どっちでもいいです。
・・・・タツーって何すか?タトゥーって言いたいんすかね?
・・・・それとも俺の知らない何か、御利益的な言葉っすかね?
・・・・・・そんんで何で勝手に盛り上がり続けて話してんすか?
・・・それより何より用件は何なんすかね?

「あのぉ〜・・・・俺に何か用ですか?」
誰も触っていいとも言ってないのに俺の身体をベタベタ触るって、
何でなんだか話が盛り上がってるんで、
だいぶ「メンドクセェな」と思いながら聞くと。

おバア1「それでねぇ〜。おニイさん「玉ひで」ってお店知ってるぅ?」

「玉ひで」か・・・・・・。
かの、勝新太郎も通ったという軍鶏鍋の有名な老舗。
俺も二十代の頃から何度も行ってる好きな店だ。
10時過ぎの時間帯に店の場所を聞いてくるって事は、
ランチの親子丼でも食いに来たけど道に迷ったってトコか・・・・。

「場所なら知ってるけど、この時間じゃランチまだですよ」
一応の親切心とメンドクささ混じりで答えると、
踵を返してカフェに入ろうかとした俺に、
おバアちゃんが追随しながら話しかけてくる。

おバア1「あら〜残念。それじゃあ一緒にお茶にしましょうか?」

おバア2「そうねぇ。若い人が一緒だと楽しいものね」

 

何で!?
何で、そーなる?

お年寄りには優しくってのは誰が言い始めたか知らネェが、
財政的に余裕の有った時代の浮かれポンチの言葉だと思ってる。
こーゆー自分達のペースで勝手に他人の時間を奪い、
「年寄りだから」って甘えた考えで許されようってのは、
あんまりにも都合が良いってもんじゃないのかい?

・・・・一時間後。
カフェの一角で、おバアちゃん二人と一緒に、
杉良太郎の「江戸の黒豹」を歌ってた、俺。

さてと・・・・。
別におバアちゃんに逆ナンされたとか、
杉良太郎の話がしたい訳じゃねぇんだ、俺。
最近は、これまた奇異な事になってきましたねって話を書こうかと。

先日、新装版となり発行された「PINHEAD」
5月20日の号からこのフリーマガジンで、
ディレクターを務める事になったというか、
既にやってるんだから、やりましたやってますだが、
シルバーアクセ業界にしろ、アパレル業界にしろ、
ブランドやってるクリエイターが、こーゆー事すると、
「フリーマガジンのディレクターやるって何?」
ってなる話だよな、そりゃ。

表面的にはね。
「凄いですね」とか「多才ですね」とかね。
褒められてんだか、貶されてんだかの意見を貰いますが、
実際のトコ、殆どの人の頭の中にあるのは、
「何やってんの、コイツ?」
とか、そんな類いのもんなんだろうとは思います、へい。

誤解とか、曲解は別に俺個人に対しては問題無い、俺。
そーゆーのは30年以上前からずっとだから、
今更、そーゆーのを解こうとは思わない。
ただ、まー何ですかね。
一応、人様のトコのフリーマガジンですから、
「何やってんの?」とか「ディレクターって何?」
何でそんな事やってんの?」
程度の事に対する、答ぐらいは示しておきたいもんですな、俺。

まー、先ずもって何で、フリーマガジンのディレクターかって、
去年の夏ぐらいからREFUSEもしくはHEATで、
フリーマガジン出そうかなって企画があったんですね。
丁度、コラムを書いてた「FLJ」の連載を終わりにして、
今度は何して遊ぼうかな?って具合で、
今更、ファッション誌とかも、もう飽きたし、
そろそろ自分のトコ発信でペーパーメディアでも。
ってな事を考えてたんですが、
「シルバーアクセスタイルマガジン」の企画は誰も継がないし、
REFUSEにしてもHEATにしても、
ペーパーメディアの勉強してるヤツが俺以外に居ないし、
スポンサーとスタッフを募って構築しようかと思ったが、
企画書作成して諸々の打ち合わせを重ねてたら、
「単発のフリーマガジンだとちょっと・・・・」
という最もな御意見頂きまして、俺。

そん時は半年に一回ぐらいのムック本的な発想だったから、
確かにスポンサードする側も、スタッフやる人も、
ちょっとスパンが長過ぎる事になるし、
読者層が狭い事になっちまうな。と考え直した、俺。
同時に、スポンサー関係の打ち合わせで提出してた企画が、
3本ぐらいあったんだが、フリーマガジンじゃない企画が良いと。
だったらフリーマガジンじゃなくてそっちの企画を進めよう。
そんなやり取りもだのツアーだのもあって、
一度はフリーマガジンの企画は中断した。

元々、フリーマガジンなんてやろうと思ったのは、
現状の、ファッションなんだかサブカルなんだかな、
シルバーアクセの中途半端で狭い認知を
どうにか他の層に広げる手段は無いモノかと思ったからだし、
スポンサーなんかと打ち合わせするのもその為。
自分のトコで勝手にペーパーメディア出版して、
知り合いのトコに「ちょっと置いて下さいな」
って、専門学生の同人誌か町内会報じゃん。
そんなんで他の層にアピールとか出来る訳ねぇし、
アクションとして何も面白く無い。
ここまでが、前置きとしての経緯、俺。

今年の、2月ぐらいだったかなぁ。
前々から「PINHEAD」ってフリーマガジンの仕事は、
撮影に関しては頼まれたら受けるぐらいでやってて、
自分が撮った写真がどう使われるかに関して、
写真自体を買い取って貰うんなら口出さないんだが、
撮影費どころか経費すら出ないなら口は出す、俺。

ところが、まぁね・・・・・・・・。

請負の仕事ってのは、個人の理想通りにはいかない。
ソレは何処の業界でも変わらないジレンマだが、
ペーパーメディアで言うなれば、
紙質・印刷・ページ数・台割・レイアウト等。
写真以前の問題が諸々発生してくるので理想には遠い。
そこで頼まれて写真撮ったからってだけで口出してても、
良くなんし意味が無いしヤメるってのが普通なんだろうがね。
悪い点が何処なのか判ってるなら良くすりゃいいじゃん。
ってな逆走的発想で企画書を仕上げて提出、俺。

そんでねー。打ち合わせしていく毎に、
「じゃーコレも、じゃーコレも、じゃー・・・・・」
そんな感じで俺が仕切る仕事が増やされていって、
いつの間にやら「ディレクター」って肩書きが付いただけ。
肩書きが付いたからって、偉くも何ともネェし、
金が貰えるどころか、場所とか諸々提供してるし、
余計な仕事がアホみてぇに増えただけだ、俺。

それでも。
シルバーアクセを他の層に広げる事や、
ペーパーメディア・フリーマガジンを発行する事、
自分のヴィジョンをカタチにする手段ってヤツは、
一歩前進させる事が出来た訳だ。
理想には、ほど遠いカタチではあるけどな。

失敗するから、損するから、苦労するから。
そうやって普段通りの事だけやって止まっているのは、
停滞どころか、時間が過ぎる中では後退してる事になる。
継続してるだけじゃ時間よりも早くは前進しない。
継続し、尚かつ新しい事に歩を進めて初めて前進出来る。
失敗しようが成功しようが行動は常に正直だ。
自分というカタチを其処に見る事が出来る。

つまり・・・・・。
昼間っからおバアちゃんにナンパされて、
杉良太郎の話で盛り上がるのも俺のカタチって事だな、俺。

だから、今度から俺の名刺の肩書きには

「江戸の黒豹」

そんで、「江戸の黒豹って何っ?」って聞かれたら、

「おバアちゃん専門のナンパ師です」

そう答えよう。そんな事やってる余裕があればな、俺。



| 2014/06/09